火災保険と火災共済の違いと特性
火災共済には年度毎の割戻金があるので、年間掛金だけで火災保険と比較してはいけません。割戻率の平均は20~30%ほどで、共済の種類によって異なります。都民共済10年分の割戻率をまとめています。
火災共済だけにこだわるのはハイリスク!?
はじめに、火災保険と火災共済の違いをご存じでしょうか?それぞれの目的と特徴をまとめました。
火災保険
- 運営会社
- 民間企業の保険会社
- 目的
- 営利目的
- メリット
- カスタマイズ性が高い
- デメリット
- 割戻金がない
火災共済
- 運営会社
- 非営利団体
- 目的
- 組合員の済(す)くい合い
- メリット
- 掛金が安い、割戻金がある
- デメリット
- 組合員に加入しないと入れないケースがある、カスタマイズ性が低い
火災保険は営利目的で運営しているのに対して、火災共済は済(す)くい合いを目的に非営利目的で運営しているので、集めた掛金と補償で支払われた共済金の金額に応じて、過剰金が発生すれば割戻金が後から戻ってきます。
少しでも保険料を安く抑えたい方には、共済に魅力を感じるのではないでしょうか?しかし、補償範囲や条件によっては共済が必ずしも割安になるとは限らないので注意しましょう。
契約期間で優劣が変わる
火災保険を新しく契約・更新する場合は、最長で10年契約を結ぶことができ、最大20%前後の長期継続割引を受けられます。(※割引率は保険会社で異なる)。
それに対して、火災共済は原則1年契約しかありません。毎年一定の時期になると、掛金による収入と共済金による支出を計算して割戻金が返還されます。
つまり、持ち家で長期契約を希望している場合は、長期割の大きい火災保険を選んだ方が安くなる可能性が高いです。反対に、賃貸の1~2年契約や持ち家の単年契約を希望している場合は、共済を選ぶメリットが大きいです。
共済の特徴と傾向
火災共済は組合員同士の済(す)くい合いを目的にしていて、イメージ的には全組合員が共通の大きな契約を交わしています。一方で、火災保険は保険会社に対して加入者が1対1で契約を結ぶ形です。
昨今は、補償範囲やリスクごとの保険金と免責の設定を細かく組み合わせられる「リスク細分型保険」が普及しています。火災共済は大きな一つの契約なので、最低限の補償でパッケージング化されています。
火災保険の補償範囲が多様化している影響を受け、共済でもオプションや特約が増えていますが、火災共済の全体的な傾向では、最低限の補償に強くフルカバーの補償内容にすると割高になりやすいです。
火災共済に興味を持った時は、基本プランの補償範囲と補償額に魅力を感じるかがポイントです。足りない部分を追加オプションで対処すると、火災保険の保険料と大きな差が出ないケースが多いです。
火災共済の割戻金はどのくらい?
火災共済には割戻金があるので、年間掛金だけで火災保険と比較してはいけません。おおよその割戻率は以下の通りです。
大手共済組合の割戻率
- 都民共済(全国の県民共済など) 30%前後
- コープ共済 20%前後
- 全労済 20%前後
都民共済「新型火災共済」過去10年の割戻率
- 平成29年 30.20%
- 平成28年 30.34%
- 平成27年 35.20%
- 平成26年 35.20%
- 平成25年 40.21%
- 平成24年 40.21%
- 平成23年 40.01%
- 平成22年 16.56%
- 平成21年 40.06%
- 平成20年 45.32%
共済の割戻率は、実際に支払われた共済金によって大きく変動しますが、長期的に見れば平均値付近で安定しています。
加入検討する共済の平均割戻率を考慮した上で、共済と火災保険の見積を比較すると良いでしょう。
火災共済の落とし穴
火災共済によっては、各種補償が薄く、大きな災害が出ると損失を100%カバーできないケースがあります。
共済金請求におけるトラブル事例をまとめました。
最大支払金が実損額を下回る
保険をかける家の評価額ではなく、加入している口数によって最大支払金が決まるので、建築費用など家の評価額に応じて最適な口数で加入しないといけません。
建築費用が高い家は、最大口数で加入しても全損(全焼)時に再建築費用を全額カバーできない場合があります。
損害状況によって共済金が減額されることも
一部の火災共済では、風災による一部損は最大で40万円など、ケース別に上限金が設定されている場合があります。
複雑なルールが用意されているケースも多く、組合員は何かあれば共済で全額補償していると勘違いしていて、いざ被害を受けて損失が出ると支払われる共済金が少なくてガッカリされる方がいます。
火災保険は基本的に火災・風災・水災は、保険の設定金額に対して実損額を100%補償してもらえるので安心です。(設定に応じて免責金が発生)
門扉・門塀が対象外
多くの火災共済には、建物の補償に門扉・門塀は含まれていません。
門やカーポートのある家は注意しましょう。
サポート体制が整っていない
火災共済は、申込書に自分自身で口数を入力して申込をする必要があります。
コールセンターや店頭で相談できる窓口を用意していることもありますが、担当スタッフが火災共済に詳しくないケースもあります。
火災保険であれば、代理店のスタッフか火災保険の専用コールセンターに問い合わせをして、適切なプランになっているか確認しながら手続きを進めることができます。
火災共済に加入する場合は、自分自身でパンフレットをしっかり読み、火災共済の特徴とルールを全て把握しておく必要があります。
火災共済を選択肢に入れるなら入念なリサーチが必要
火災保険と火災共済は相応にメリット・デメリットがあり、甲乙を付けられません。
非営利団体が運営して割戻金を払っているだけの理由で共済を有力候補に考える人がいますが、共済の特性を理解しておかないとオプションをたくさん付けて火災保険より高額になるケースや、家の損害を受けた時に100%補償されないケースがあります。
火災共済に加入して、保険料の節約と手厚い補償を両立している方もいますが、一部には損失が発生して請求手続きをした時にはじめて、思っていた条件と違うことを知って後悔される方もいます。
火災共済を選択肢に入れる場合は火災保険以上に入念なリサーチをして、メリット・デメリットを理解するよう心がけましょう。割戻金を含めても火災保険より割高になるケースもあります。
昨今は個人情報の入力不要で簡単にネット見積を取れる火災保険が増えていますので、火災共済を軸に考える場合でも火災保険の見積を取った上で比較検討してください。賃貸や単年契約で最低限の補償に抑えたい場合は、火災共済だけの見積で検討しても大きな問題はないでしょう。
高額プランになるほど、火災保険と比較する重要性が高くなります。