洪水リスクに応じた火災保険選び
楽天損保の場合、ハザードマップに応じた4段階のリスク区分に応じて水災リスクの保険料が1.5倍ほど変わってきます。損保各社で保険料率を見直す動きが活発なので、火災保険を見直す必要性が高まっています。
ハザードマップと火災保険の関係
ハザードマップによる影響
従来の火災保険料
都道府県単位で一律の保険料率
これからの火災保険料
保険料が災害ハザードマップと連動になる!?
相次ぐ大規模自然災害によって、災害(洪水)ハザードマップと火災保険料を連動させる動きが活発になっています。これまで火災保険の水害リスクは都道府県単位で料率が一律設定でした。
たとえば同じ東京都なら水害とは無縁な小高い丘の上にある住宅と、河川の近くなどリスクが高い立地の住宅でも保険料が同じです。
昨今の大規模水害で被害を受けた住宅は大半が災害ハザードマップの危険区域内だったデータもあり、火災保険料がハザードマップと連動するのは理に叶った対応です。
個人向け住宅用火災保険では楽天損保が先陣を切ってハザードマップ連動型の保険料率を2020年4月1日契約始期分以降から導入しています。
ほかにも東京海上日動などの大手損保もハザードマップ連動型保険料率を導入する予定があることをアナウンスしていて、近い将来にはハザードマップ連動型火災保険が主流になるかもしれません。
保険料はどれだけ変わるの?
楽天損保ではオンライン見積の画面で水災リスクに応じた保険料の目安を公開しています。物件の立地によるハザードマップ浸水深に応じて5つのリスク区分に分類し、その他の条件を踏まえてA・B・C・Dによる4つの保険料率に分類されるルールです。
一例として東京都で一軒家・建物価格1,000万円の条件だった場合、水災料率区分AとDで1.5倍ほどの差が出ます。
損保会社による違いも
ハザードマップと連動させた保険料率は導入が始まったばかりです。
楽天損保ではリスク区分に応じて最大1.5倍の差が発生しますが、他の損保会社では「将来的にリスクが高い家は従来の保険料率より10%ほど高くなる」と説明しているケースがあります。
ハザードマップのリスク区分によって変わる料率は、損保会社ごとに対応が大きく変わるかもしれません。
災害ハザードマップの見方
ハザードマップは自治体ごとに公開しているケースが多く、火災保険の水災リスクでは主に「洪水ハザードマップ」の浸水深でリスク区分を決まります。浸水深とは洪水・津波等が発生した際に、最大で溜まる水の深さです。
国土交通省の資料によると、浸水深0.5m以上で床上浸水の恐れが発生します。
また、浸水深1.0m以上になると建物が全壊する恐れが発生しますので、浸水深0.5m以上の危険区域であれば火災保険の水災リスクを手厚くしておくとよいでしょう。過去には浸水深0.5mでも、水の流れが速い理由でゴムボートによる救出活動が行われたケースもあります。
洪水による影響は想像以上に大きいものですので「床上浸水にならなければ平気だろう」などと甘く考えてはいけません。
火災保険選びのポイント
まずは自治体のホームページ等から洪水ハザードマップをチェックし、自宅(被保険住宅)の危険性をチェックしてみてください。
これから火災保険の新規契約や更新を予定している方はもちろん、既に長期契約を結んでいる方も防災意識および長期的な保険料節約を目的にハザードマップを確認しておく必要性が高いです。浸水深0.5m未満など洪水等のリスクが低い物件であれば、ハザードマップ連動型火災保険を選ぶとよいでしょう。
浸水深0.5m以上など水災リスクが高い物件は、ハザードマップの影響を受けない従来の保険料率を採用している火災保険で長期契約を結ぶことをおすすめします。
いずれにしても一括見積サービスを活用すれば、条件に応じて最安の火災保険を見つけることができます。
洪水ハザードマップの浸水深が高い物件は、将来的にどこの保険会社を選んでも保険料率の高まる恐れがあるため、なるべく長い期間で契約するとよいでしょう。
相次ぐ大規模水害によって各社で水災保険料の値上げ傾向が続いています。加入している保険会社がハザードマップ連動型保険料率に切り替えるタイミングや更新時期だけではなく、思い立ったタイミングで火災保険の見直しを検討してください。
マンションの場合
マンションは保険料率がハザードマップに連動するかを問わず、建物全体で同じ保険料率が適用されます。たとえばハイリスクの1階と低リスクの最上階を比較した場合でも、水災リスクの保険料率は同じになる仕組みです。
保険料の算出方法(ハザードマップ連動の有無)を問わず、専有部分の階数に応じて水災リスクの補償を付けるべきか考えてみてください。2階や3階の物件でも、洪水ハザードマップの浸水深が高い地域は水災補償を付けておくと安心です。
分譲マンションなど区分所有権を持つマンションは、管理組合で建物(共用部分)の火災保険に加入しています。ハザードマップをチェックして災害リスクが高い立地のマンションは、理事会・総会等で火災保険の見直しを検討するように提案しましょう。
マンションの管理費は火災保険料の占める割合が高いです。管理組合が加入する共用部分の火災保険料を抑えることは、月々の出費を抑えて物件の資産価値を守ることに繋がります。
おわりに
ハザードマップ連動型保険料への移行が始まる動きは2020年より始まりましたが、2021年度時点でハザードマップ連動型保険料率に関する具体的なアナウンスをしている保険会社は少ないです。
全ての保険会社がハザードマップの色分け区分で極端に保険料が変わるようになるかは不透明ですが、水災リスクの保険料率を見直す動きは今後も活発になるでしょう。
災害による保険金支払い額は2018年度に過去最高の1兆5,695億円を記録し、2019年度も1兆円を超える高水準を維持しています。2017年度以前は平均で2,000億円を下回る水準で推移していた統計データから考えると、従来の常識が通用しないほど災害リスクが高まりました。
参考記事:日本経済新聞
『火災保険とは - 自然災害多発で保険金支払い急増』地球温暖化の影響によって自然災害は今後も減らない可能性が高いです。ハザードマップ連動型保険料率は急増する保険金支払いに対処するための一つの策です。ハザードマップで危険区域になっていない物件であっても、将来的な保険料値上げに備えて火災保険の見直しを検討してみてください。
既に始まったハザードマップ連動型保険料率の導入によって、今後は従来以上に複数の保険会社を比較する重要性が高まるでしょう。