マンションは火災保険に手厚く加入するべき
集合住宅のベランダ(バルコニー)に洗濯物や灯油のポリタンクを置いておくと、他の部屋から火災が発生した際に燃え広がるリスクが大きくなるので注意しましょう。
鉄筋コンクリートのマンションは全焼する?
マンションなどの集合住宅は、自分の部屋の失火に気をつけても、他の部屋から発生した火事で被害を受けるリスクがあります。法律上は火元が違う住宅・部屋だったとしても、保有者もしくは居住者の火災保険で対処しないといけません。
そのため、集合住宅では火災保険に加入する重要性が高いと言われていますが、鉄筋コンクリート造のマンションでも近隣の部屋からの火災が燃え移るのでしょうか?鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC造)の場合、木造住宅のように壁と柱が燃えて倒壊する事例は極めて少ないです。
また、壁や床がコンクリートになっているため、短時間でコンクリートや鉄骨が燃えて直接的な被害を受けることはありません。
ただし、同じマンション内から火災が発生した場合には様々なリスクがあり、状況によっては短時間で幅広い住居に燃え広がってしまうケースがあります。
鉄筋コンクリートの火災事例
鉄筋コンクリート造のマンションで実際に起こった火災事例をまとめました。
大半のケースは火元になった部屋のみの火災ですが、一部で全焼になるケースもあります。また、燃え移らなかったとしても部屋の中が水浸しになる被害もあるので注意しましょう。
部屋のみが全焼
鉄筋コンクリート造の建物は壁が燃えにくいですが、床材・家具・壁紙など部屋の中には燃えやすい物がたくさんあります。自らの部屋が火元になれば、部屋の中が全焼するケースが多いです。
マンション火災の大半は火元になった部屋だけの被害で済んでいます。他の部屋に燃え移る事例が少ないのは、日本のマンションは海外に比べて平均築年数が浅いことと、消防拠点が多数あることが関係しているのでしょう。
全水損になるケース
隣接する部屋で火災が発生した場合、火が燃え移らなかったとしても消火活動による影響で部屋の中が水浸しになるケースがあります。隣の部屋が火事になった際には、窓を全部閉めてから脱出することで水損リスクを軽減できますが、有事の際は人命を最優先にした行動を心がけてください。
消火活動による水損になれば、簡単な掃除のみで復旧できない状況に陥って住めなくなってしまうこともあります。集合住宅は消火活動による水損リスクがあることを覚えておきましょう。
ベランダ・バルコニーから燃え広がる
2014年に大阪の生野マンション(鉄筋コンクリート5階建て)で起こった火災では、3階から火災が発生し、窓から吹きだした炎が他の住居のバルコニーにある洗濯物などへ引火し、またたく間に炎が建物全体に燃え広がりました。
また、低層階の家ではストーブと灯油のポリタンクに引火した影響で、上層階よりも火災規模が大きくなりました。集合住宅では壁ではなくベランダや廊下から火が入ってくることがあります。鉄筋コンクリート造は木造よりも耐火性能が高いですが、風や洗濯物・ベランダに出してある灯油のポリタンクによっては大規模火災に発展するので注意しましょう。
鉄筋コンクリート造のマンションで全ての住居に燃え広がるケースは珍しいですが、風向きや季節によっては短時間で燃え広がってしまいます。
グレンフェル・タワー火災
2017年6月にイギリス・ロンドンにある地上24階建ての低所得者向け高層マンションのグレンフェル・タワーから火災が発生し、70名の死者を出しました。
この火災が大惨事に発展した理由は以下の通りです。
- エレベータ・階段が建物の中心付近に集中していて、唯一の避難経路から炎が上がっていった
- 屋内階段に防火扉がなかった
- スプリンクラーが未設置だった
- 外壁を燃えやすい素材で修繕していた
- 火災発生時が深夜
- 警報システムが作動しなかった
現地の消防法に多数の違反があったことが原因で、日本では高層マンションでこれほど重大な火災事故に発展した事例はありません。
国内のマンションで同等規模の大規模火災が発生する可能性は低いですが、国内のマンションでも軽微な消防法違反をしている物件が多数あると言われています。
実際に火災が発生すると思わぬ欠陥によって建物全体に重大な被害が出る恐れがあるので、耐火性能の高い鉄筋コンクリート造のマンションでも火災保険にしっかり加入しておきましょう。
おわりに
鉄筋コンクリートのマンションが全焼する可能性は低く、木造アパートに比べれば耐火性能が高いです。火災発生時は火元になった部屋のみが被害を受けるケースが多いですが、消火活動による水損被害が多いので注意しましょう。
複数の部屋に燃え広がる確率は低いですが、実際に火災が発生すると思わぬ所から建物全体に燃え広がるケースがあります。鉄筋コンクリート造を理由に甘く考えるのではなく、幅広いリスクに備えて防災対策と火災保険への加入をしっかり行ってください。
鉄筋コンクリート造は火災保険料が安いので、火災リスクおよび臨時費用に関連した補償を手厚く加入しておきましょう。