建物と家財の保険金額の仕組み
火災保険の見積を取るときは、築年数・地域・延床面積・新築時の建築費用などを入力すれば自動的に適正な評価額を計算してくれます。見積比較する際は保険料だけではなく、補償額や新価・時価の違いをチェックしましょう。
補償額の決定
火災保険は加入条件の補償額を無条件で支払ってくれるわけではなく、損害を受けた評価額(時価)にあった金額しか補償されません。
たとえば、建物の評価額が2,000万円にも関わらず、適当に3,000万円で火災保険に加入して全焼の火災被害を受けた場合、支払われる保険金は2,000万円です。この場合、本来は2,000万円の補償額で加入しておけば十分なところを、3,000万円に設定したことで上乗せされた毎年の火災保険料をドブに捨てている状態だったと言えます。
補償額の決定は保険商品によって新築時の建築費用がベースになる「新価(再調達価額)と新価から使用による消耗分を控除して算出する「時価」の2種類があります。
最近の火災保険は、補償が手厚い「新価」が一般的です。新価と時価で実際に損害を受けたときの補償額は大きく変わるので、火災保険加入時には必ず確認しておきましょう。
家財保険の補償額については、個別に家具、家電の調達費用を計算するのは困難のため、年齢や家族構成によって適正価格の目安の一覧表が各保険会社から用意されています。
新価(再調達価額)の算出方法
新築を購入して火災保険に加入する場合は、建物価値の評価で建築費を補償額に設定します。
新築ではないけど、新築時の建築費用(建物価値)が分かる場合は、年次別指数表による評価(建物価値×建築費倍数)で算出します。新築ではなく、建物費用が分からない場合は新築時単価法による評価(新築費単価×延床面積)で算出します。
新築時の火災保険加入のみ補償額の決定は用意で、だれでも簡単に算出できます。年次別指数表と新築時単価法について詳しく解説します。
年次別指数表による評価とは
新築当時の建物価値に対して、物価変動を考慮して算出します。建築費倍率は、新築当時と物価の違いを加える係数で、毎年地域ごとに見直しがあります。
つまり、古い家であれば割引される減価償却法とは違い、建築年の物価に対して現在の物価で再調達する場合の適正費用を算出します。建物倍率は木造、非木造2種(鉄筋コンクリート造、鉄骨造)、プレハブ系3種(木質系、鉄骨系、コンクリート系)ごとに変わります。
2007年以降に建築された建物は全て建築倍数1になり、新築時と同様に建築価値がそのまま補償額(評価額)になります。2000年以降に建築された建物は2017年現在、0.9~1.1と誤差は0.1以内になります。築年数が古いほど、建築倍率が高くなり、新築時以上の評価額になります。
建築倍率の一例(木造住宅の場合)
- 2007年以降
- 1(木造以外も含む)
- 2006年
- 1.01
- 2000年
- 1
- 1995年
- 0.94
- 1992年
- 0.89
- 1988年
- 1.08
- 1980年
- 1.21
- 1975年
- 1.62
年次別指数表による評価は建物価値さえわかれば、あとは物件構造や地域によって保険会社が計算してくれます。
新築費単価法とは
各都道府県が設定している建物構造別の1㎡当たりの新築費単価と保険の加入する建物の延床面積をかけて算出します。算出された金額の±30%を各保険会社が調整して最終的な評価額を決めるため、見積を取る保険会社ごとで評価額が異なります。
家財の契約金額(保険金額)の設定方法
各保険会社の設けている家財評価額の目安の金額や積算シートを参考に、加入者ごとに任意で契約金額を決定できます。ひとつの家財で30万円を超える価値があるものは、保険契約時に申込書に明記しておく必要があります。実際に保険金請求するときは損失を受けた家財の時価額をベースに算出します。
各保険会社が定める目安の金額によりも少ない場合は問題ないですが、家財保険の設定金額が高すぎると全焼の火災被害にあっても保険金額を全額補償されないケースが増えます。
家財の標準新価額は各保険会社によって異なりますが、基本的に配偶者の有無と子供の人数、年齢によって計算され、高齢で家族が多いほど家財の契約金額は高額になります。
家財の標準新価額表の一例
おおよその目安
- 単身
- 250万円~300万円
- 夫婦のみ
- 500万円(27歳以下)~1,500万円(48歳以上など)
- 夫婦+子供
- 夫婦飲みに比べて。子供1人につき100万円アップ
ネット見積で適正な補償額がわかる
火災保険の補償額には難しい計算式によって定められた評価額にする必要があります。しかし、保険加入希望者は難しく考える必要はなく、ネット見積を活用して、建物の築年数、延床面積、建築費、地域、構造などを入力していけば自動的に適正な補償額を算出してくれます。
ただし、各保険会社によって新価と時価で異なる補償内容になっている場合や、新価の調整額(主に建築費不明の場合)が異なり、一括見積を取ると各保険会社で補償額が異なるケースもあります。
見積結果を比較するときは、保険料だけではなく、提示された補償額もチェックしましょう。たとえば保険料が同じでも、建物の補償額が多い保険会社があれば、手厚い分保険料も割安だと評価できます。
また、安い補償額を提示した保険会社と条件を合わせれば、さらに保険料を安くできます。不明な点があれば、各保険会社の電話窓口に問い合わせてみてもよいでしょう。